無料広告掲載を騙る悪質な有料求人情報サイトにご注意ください

 「ハローワークに求人を出したところ、求人情報サイトの従業員を名乗る者から、電話やメールなどで『無料』の広告掲載を勧誘され、無料ならいいかと思って掲載を承諾した。すると、後日、無料だったのは最初の3週間だけで、無料期間が過ぎたから有料契約に自動的に移行(契約更新)したとして、高額な広告料金を請求された。」
 中小の事業者を中心に、このような悪質サイトによる被害が全国的に多数発生しています。中でも、介護施設、歯科医院などの医療機関、保育園関係などが、特に多く標的にされているようです。

 このような悪質サイトの手口は、いかにも詐欺(的)です。
 そもそも、この「無料広告掲載」で悪質サイトが意図しているのは、「契約」を楯に取って高額な金銭を要求することにあります。悪質サイトは、腹の中ではそのような本音を隠し持ちながら、口では「無料」をことさら強調して中小の事業者を油断させて「契約」をとりつけます。その裏で、悪質サイトは、中小事業者が高額な費用を支払わざるを得なくなるよう、契約更新をせずに終了させる手続をことさら分かりにくくしておきます。よくある手口は、無料期間の終了間際に、アンケートやセールなどの広告であるかのように見せかけたファクシミリや手紙を送りつけて、その中に目立たず分かりにくいように、無料期間が終わって有料になるという内容をそっと忍ばせておくというものです。中小の事業者の大半は、毎日の仕事に追われて忙しい中で、関心のない広告など読まずに捨ててしまいます。そうすると悪質サイトの思う壺です。中小事業者の知らないうちに無料期間が過ぎてしまったところで、悪質サイトは、「契約」を楯に「広告料金」名目で高額な金銭を支払うよう要求してきます。悪質サイトの手口が「詐欺(的)」と言われる所以は、こういったところにあります。
 このように、高額な金銭の要求こそが、悪質サイトの本当の目的です。無料広告掲載は、被害者を誘う罠であり、本当の目的を隠しごまかすための見せかけにすぎません。

 ここまで読まれた方の中には、よくあるサブスク(サブスクリプション)の月額課金・定額制サービスとどこが違うのか、と疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
 たしかに、サブスクの中には、最初の1か月間はお試し期間で無料となっているというようなサービスは珍しくありません。そのようなサービスだと、無料期間が終わった2か月目からは料金が発生します。
 しかし、正常なサブスクのサービスでは、ことさら無料であることをアピールしていません。あくまで有料のサービスであって、ただ最初の1か月に限って無料でお試しができると謳うなどするのが普通です。サービスはあくまで有料ですから、申込時にクレジットカード情報を登録するなどもします。そのため、利用者にとっては、そのサービスが有料だということは明らかで、有料のサービスを「無料」だと誤解する可能性はまずありません。
 このように、当初から騙すつもりの悪質サイトと、そのような意図のない正常なサブスクのサービスとでは、そもそも本質的に全く異なるのであって、両者を同列に語るべきではありません。

 弊事務所で、お客様からこの種の相談を最初に受けたのは、今から3年前の令和元年(2019年)のことでした。その後も、同様の被害は全国各地で手を替え品を替え続いており、いまだに終息の気配は見えないようです。奈良弁護士会も、令和4年(2022年)9月21日付けで、「求人情報サイトへの無料広告掲載の勧誘にご注意ください」と注意喚起する意見書を発表・公開しています。興味のある方は、どうぞご覧になってみてください。
 このような悪質サイトの被害にお困りの皆様におかれましては、できるだけ早く弁護士に相談していただければと思います。